契約更新時に発生しやすいトラブル
を項目別に分けています。項目をクリックすると、具体的な質問が出てきます。

更新拒絶 家賃の値上げ 契約内容の変更 敷金の変更
更新料 更新手数料 連帯保証人・保証会社関連
更新拒絶

(1)家主が「次回の契約更新はしない」と言ってきたが、泣く泣く出て行かざるを得ないのか?

(2)「定期借家契約」だが、契約更新しようとしたら、家主が拒否をした。従わざるを得ないのか?

(3)家主が、「自分の子供が結婚して住む」ということで、更新拒絶の「正当事由がある」と言ってきたが、退去したくなくても従う義務があるか?

(4)家主が、「建物が古く建替えるので契約更新はしない」と言ってきた。まだまだ十分住めると思うのだが、家主の言うとおり退去せざるを得ないのか?

家賃の値上げ

(1)契約更新時に、家主から「家賃を値上げする」という通告を受けたが、拒否することができるか?

(2)契約更新時に、周辺の物件は家賃が下がっているのに、家主から「契約書に記載されている通り、家賃を値上げする」という通告を受けたが、従わざるを得ないのか?

契約内容の変更

(1)契約更新の際、家主が契約内容を変更したいと言ってきたが、内容は借主に不利になるものだったので拒否したいのだが、家主は「拒否するなら更新しない」と言ってきた。家主に従うしかないのか?

(2)家主が、一般の賃貸借契約から定期借家契約に変更すると言ってきた。家主は「応じないのなら退去してほしい」と言っているが、応じざるを得ないのか?また、入居者が不利になることはないのか?

(3)会社の法人契約で借りていた物件だが、退職に伴い、個人契約に変更を求めたが、家主から拒否された。引き続き住むにはどうすればよいか?

敷金の変更

(1)契約更新の際、敷金の金額を値上げすると言ってきた。納得できないのだが、応じる義務はあるのか?

更新料

(1)契約書には「契約更新する場合には更新料を支払う」となっているが、更新料は法律上の規定はないと聞いたので、支払い拒否ができるか?

(2)知り合いから「法定更新すれば更新料を支払う必要はない」と聞いたので、そうしようと思うが、家主からは「契約書にあるとおり更新料を支払わなければ退去せよ」と言ってきた。どちらが正しいのか?

(3)次の物件への入居可能日が、現在の物件の契約期限が切れる3日後であるため、家主に話したところ、「日割り家賃だけでなく更新料も支払ってもらう必要がある」といわれた。しかし、たった3日間なのに、更新料を全額支払うのは納得できないので、何とかできないでしょうか?

更新手数料

(1)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書のどこにも記載がないので拒否したいのだが、業者は「更新手数料を支払わなければ更新しない」と言っている。どうすればよいか?

(2)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。そこで、契約時の書類をよくみると、重要事項説明書にはその旨が書かれていた。このような場合、更新手数料の支払いを拒否することはできないのか?

(3)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書をはじめ、どこにも「更新手数料が必要」という記載がないので拒否することにし、家主に対し、「家主との間で直接更新手続きしたい」と言ったが、家主は「管理会社に任せているので管理会社を通してほしい」と言って譲らない。このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?

(4)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書をみると、確かに「更新手数料が必要」という記載があった。このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?

(5)家主に支払う更新料以外に、仲介業者から更新手数料の請求が来た。契約書をみると、確かに「更新手数料が必要」という記載があった。このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?

連帯保証人・保証会社関連

(1)契約更新時に、更新後の連帯保証人の変更をしたいが、可能か?

(2)契約更新時に、更新後の連帯保証人の変更をお願いしたが、家主に拒否された。何とかならないか?

(3)契約更新時に、家主側から、「連帯保証人の変更が契約更新の条件である」と言ってきた。新たな連帯保証人を立てるのが困難なので、家主の要求を拒否したいのだが‥。

(4)契約更新時に、家主側から、「連帯保証人を追加せよ」と言ってきた。新たな保証人を追加するのが困難なので、家主の要求を拒否したいのだが‥。

(5)契約更新時に、従来の連帯保証人ではなく、保証会社の利用に切り替えたいが、可能か?

(6)契約更新時に、家主側から、「従来の連帯保証人ではなく、保証会社の利用に切り替える」と言ってきたが、従来の連帯保証人のままで行きたい。何とかならないか?


更新拒絶

(1)家主が「次回の契約更新はしない」と言ってきたが、泣く泣く出て行かざるを得ないのか?

→  定期借家契約ではない一般の賃貸借契約の場合には、家主が、契約更新の拒絶を行うためには、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、家主が更新を拒絶する(退去を求める)「正当事由」が必要です。
  家主が、「次回の契約更新はしない」と言ってきた時期が問題ですが、「契約終了の1年前から6ヶ月前までの間」でなければ、「正当事由」をうんぬんする前に、主張そのものが認められないことになります。
 なぜなら、この期間は、借地借家法の強行規定に当たり、強行規定に反するものは無効だからです。
  次に、「正当事由」がなければ、家主として更新拒絶することができないのですが、「正当事由」そのものは、非常に厳密に解釈されており、よほどのことがない限り、家主の主張どおりに認められることはありません。
  「正当事由」に関しては、相談内容では一切触れられていませんので、家主に正当な事由があるかどうかもわかりませんが、理由を明らかにしていないところを見ると、そもそも正当な理由がまったくないのではないかと思われます。
  いずれにしても、借地借家法の第28条によれば、「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」とされており、家主が建物を必要とする事情と借主のそれとを比較したり、建物の使用状況、そして、家主が退去を求めるに当たって、財産上の給付、すなわち、立退き料をいくら支払うつもりなのかなどを総合的に考慮したりして、正当事由があるかどうかが判断されるのです。
  従って、家主が、単に、「契約期間が終わったら出て行ってくれ」と言っても、従う必要は一切ないのです。


(2)「定期借家契約」だが、契約更新しようとしたら、家主が拒否をした。従わざるを得ないのか?

→  定期借家契約というのは、そもそも契約更新のない契約なのです。
  一般の借家契約では、契約更新が可能ですし、家主が契約更新を拒絶するためには、正当事由が必要ですが、定期借家契約の場合には、更新そのものが認められていませんので、正当事由もまったくいらないのです。
  従って、借主に可能なのは、契約更新ではなく、「再契約」ということになります。
  契約更新と再契約の違いはどこにあるかといえば、いくつかの違いがあります。
  まず、前者の場合には、正当事由がないと更新拒絶できないのに対して、後者の場合には、家主として再契約を拒否することが可能だということです。
  二番目に、前者の場合には、更新料が必要な場合が多いのですが、後者の場合には、更新料は不要ですが、礼金等が必要になります。
  三番目に、仲介業者が絡んでいる場合には、前者の場合には、更新手数料を請求する場合があるのに対して、後者の場合には、仲介手数料を請求してくる可能性があることです。
  そして、四番目には、前者の場合には、敷金の精算を行うことはありませんが、後者の場合、家主はいったん敷金の精算をしたうえで、再度敷金を納めるように主張してくる可能性もあります。
  なお、定期借家契約の場合には、契約時に、「定期借家契約である」旨の書面を受け取っているはずですが、もし、定期借家契約であるという書面を受け取っていなければ、定期借家契約とは認められず、一般の借家契約とみなされます。
  いずれにしても、定期借家契約では、契約更新がないため、家主が再契約を拒否すれば退去せざるを得ないのです。


(3)家主が、「自分の子供が結婚して住む」ということで、更新拒絶の「正当事由がある」と言ってきたが、退去したくなくても従う義務があるか?

→  家主から、入居者の退去を求める場合、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、正当事由が必要とされています。
  通告期間が守られていなければ、正当事由の有無には関係なく、家主から退去を求めることはできません。
  通告が適法に行われた場合には、正当事由があるかどうかがポイントとなりますが、家主の「自分の子供が結婚して住む」という事情は、正当事由の一部にはなりえても、それだけでは正当事由として認められるわけではありません。
  借地借家法の第28条によれば、「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」とされており、これらの事情を総合的に考慮して、家主としての正当事由があるかどうかが判断されるのですが、通常は、財産上の給付、すなわち、立退き料を支払うことで正当事由を補完することでようやく認められることが多いのです。
  従って、家主に対しては、上記の説明を行い、どうしても退去を求めるというのであれば、相当額の立退き料(同じ地域にある同等物件に引越するために必要な諸費用で、一般的には、家賃の6か月分程度は必要とされています)を支払うように求めたほうがよいでしょう。
  どうしても住み続けたいという場合には、家主からの要求を退ければ、そのまま住み続けることができるでしょう。
  その場合、家主としては、法的手段に訴えることになりますが、裁判などでは、上記の考え方に沿って、正当事由があるかどうかを判断するでしょう。


(4)家主が、「建物が古く建替えるので契約更新はしない」と言ってきた。まだまだ十分住めると思うのだが、家主の言うとおり退去せざるを得ないのか?

→  まず、家主から、入居者の退去を求める場合、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、正当事由が必要とされています。
  従って、家主が通告してきた時期が問題となります。
  もし、通告時期が、「契約終了の1年前から6ヶ月前までの間」でなければ、そもそも正当事由の有無に関係なく、契約更新の拒絶そのものが認められなくなります。
  通告自体が、適法に行われた場合には、正当事由があるかどうかという判断をすることになりますが、「建物が古く建替える」というのは、一見すると、正当事由に見えるのですが、単に、「古い」というだけでは正当事由とは認められていません。
  通常、建物が古くなり、「朽廃(きゅうはい)」とみなされるような場合には、正当事由としてみなされますが、「朽廃(きゅうはい)」という状態は、室内から青空が見えるようなぼろぼろの状態ですので、現代においては、「朽廃(きゅうはい)」に近い建物を貸す家主もないでしょうし、借主もいないと思います。
  従って、「朽廃(きゅうはい)」を理由にした正当事由が認められるケースは、ほとんどないと思います。
  「朽廃(きゅうはい)」までには至らない場合でも、自身による倒壊が非常に強いと判断されるような場合には、正当事由として認められる可能性はあります。
  また、まともな生活を送れるようにするためには、大修繕が必要でありながら、大修繕しても、居住用の建物として利用できる期間が短い場合には、大修繕する意味がないため、大修繕が必要になった場合には、正当事由として認められる可能性が高くなります。
  そこで、借主が、(大修繕を行わなくても)「まだまだ十分住めると思う」のであれば、家主としての正当事由が認められる可能性は非常に低いと思われます。
  それでも、家主が退去を求める場合には、前項などで述べたような立退き料の支払いが条件となるでしょう。
  従って、家主からの「建物が古く建替えるので契約更新はしない」という主張をそのまま受け入れる必要はなく、契約更新することが可能です。


家賃の値上げ

(1)契約更新時に、家主から「家賃を値上げする」という通告を受けたが、拒否することができるか?

→  まず、契約書に、家賃の値上げに関する事項が入っているかどうかを確認する必要があります。
  もし、家賃値上げに関する事項があれば、その内容によっては、ある程度拘束されることもあります。
  しかし、本来、家賃は、家主と借主の合意で決定する事項ですし、家主の一方的な通告では認めがたいものです。
  家主が、一方的に通告してきたということですが、その値上げ幅・値上げ金額が妥当ではないと思える場合には、借地借家法の第32条に規定する借賃増減請求権にもとづいて、家賃の一方的な値上げに対抗して、裁判で新しい家賃が確定するまでの間、家賃を供託するという手段もあります。
 ただし、裁判で家賃が確定するには、不動産鑑定士による家賃の査定が必要となり、かなりの費用がかかってきますので、実際には、家主との話し合いで、ある程度のところで妥協するほうが賢明でしょう。


(2)契約更新時に、周辺の物件は家賃が下がっているのに、家主から「契約書に記載されている通り、家賃を値上げする」という通告を受けたが、従わざるを得ないのか?

→  契約書に家賃を自動的に値上げするというような条項がある場合、その規定が自動的に認められるわけではありません。
  実際には、どの程度の値上げ幅・金額であるのかが問題となります。
 いくら、契約書に記載があるからと言って、まったく合理的な理由のない、一方的かつ高額な家賃値上げは認められないでしょう。
  なお、2001年4月以降の契約であれば、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定が適用されますので、このような規定は許されないと考えるべきです。


契約内容の変更

(1)契約更新の際、家主が契約内容を変更したいと言ってきたが、内容は借主に不利になるものだったので拒否したいのだが、家主は「拒否するなら更新しない」と言ってきた。家主に従うしかないのか?

→  家主から、契約更新を拒絶するためには、契約終了の1年前から6ヶ月前までの間に通告することと、「正当事由」が必要ですが、家主からの一方的な契約内容通告に対する拒否は、当然のことながら、正当事由にはなりえません。
 つまり、家主には、契約の更新を拒絶する権利はないのです。
  従って、家主に従う必要は一切なく、更新するにしても、双方による「合意更新」ができなければ、そのまま居住を続ければ「法定更新」という状態になり、入居者の居住権は保護されます。
  合意更新と法定更新の違いは、前者が更新料の支払いが必要になることが多いのに対して、後者では更新料を支払う義務はなくなります。
 なお、法定更新した場合には、契約期間については、「契約期間を定めない契約」となります。
 つまり、家主が6ヶ月前に通知しなければ、借主が希望すればいつまで経っても契約期間が続くことになるのです。


(2)家主が、一般の賃貸借契約から定期借家契約に変更すると言ってきた。家主は「応じないのなら退去してほしい」と言っているが、応じざるを得ないのか?また、入居者が不利になることはないのか?

→  2000年3月に導入された「定期借家契約」制度は、従来の一般的な借家契約に比較すると、家主に有利な条件が数多く盛り込まれています。
  そこで、家主が、それまでの一般の契約から定期借家契約への変更を求めてくるケースが多いのですが、建物の用途が「居住用」である場合には、「当面の間」、そうした変更は認められていません。
 それは、当事者同士が合意していても認められないということになっています。
  しかし、建物の用途、使用目的が「事業用」である場合には、変更することが可能となっています。
  従って、相談内容が居住用であるなら、家主の主張に従う必要がないばかりか、従うことを了解していても、法律上、変更が認められていないのです。


(3)会社の法人契約で借りていた物件だが、退職に伴い、個人契約に変更を求めたが、家主から拒否された。引き続き住むにはどうすればよいか?

→  法人契約の場合、家主と契約しているのは法人であり、入居者は、法人が認めた特定の社員に限っています。
  従って、退職に伴って社員の地位を失えば、当然のことながら、退去しなければならないのです。
  借地借家法も、原則として、社宅・代用社宅には適用されないとされているのです。
 つまり、借地借家法を盾にして、居住権を主張することができないということです。
  なぜなら、法人契約(社宅・代用社宅)の場合、法人との労働契約にもとづいて、法人が行う福利厚生活動の一環として、住宅を利用できるようにしていたからです。
  そこで、どうしても引き続いて住み続けたいという場合には、法人に相談し、法人契約から個人契約に切り替えることの了解を得た上で、家主と交渉しなければならないでしょう。
  その場合、社宅として利用していた場合の家賃ではなく、新たに家賃交渉しなければなりませんし、家主が拒否すれば、住み続けることはできません。


敷金の変更

(1)契約更新の際、敷金の金額を値上げすると言ってきた。納得できないのだが、応じる義務はあるのか?

→  契約書の中で、敷金に関する記載がどのようになっているのでしょうか?
  一般的には、家主から、一方的な敷金値上げを行うことは許されていませんが、契約書に、「敷金は家賃の○か月分」というような記載がある場合、家賃の金額が値上げになれば、敷金の割合としては同じでも、敷金の絶対額としては、家賃の値上げ相当分がアップされることになるのです。
  敷金は、借主の賃料の不払いや原状回復に当てるための費用ですから、家賃の値上げによって、敷金をその分スライドしてアップすることは、不合理とはいえませんので、家賃の値上げが不合理でなく、敷金が「家賃の○か月分」というような規定がされているときは、拒否することはできないでしょう。


更新料

(1)契約書には「契約更新する場合には更新料を支払う」となっているが、更新料は法律上の規定はないと聞いたので、支払い拒否ができるか?

→  更新料は、礼金などと同じく、法律で定められたお金ではなく、特定の地域で慣習的に支払われているお金です。
  しかし、「慣習的に支払われているだけ」と言っても、無視できるものではありません。
  契約書に、更新料の支払いに関する記載があり、契約書に署名捺印していると思いますが、それは、「更新料を支払うことを約束する」ことになりますから、契約書に記載があるにもかかわらず、それを無効とすることができるのは例外的なことです。
  契約書に記載があっても効力を発揮しないのは、借地借家法上の強行規定に反する場合や公序良俗に反する場合などがありますが、更新料の支払いは、いずれにも該当しません。
  従って、原則として、支払い拒否はできません。
  なお、それでも支払い拒否を続けた場合、家主から退去を求めてくる可能性が強いですが、そのまま引き続き居住を続けていれば、「法定更新」という状態になり、法律上、住み続けることは可能です。
  しかし、自ら、支払いを約束していた費用を、特別な合理的な理由なく、支払い拒否を行うのは、道義的な問題がありますし、退去の際に、敷金返還などでトラブルになる可能性も大きくなるでしょう。
  借地借家法は、借主保護を重視していますが、だからと言って、その法律を盾にして、一度、了解した費用の支払いを拒否すべきではないと思います。


(2)知り合いから「法定更新すれば更新料を支払う必要はない」と聞いたので、そうしようと思うが、家主からは「契約書にあるとおり更新料を支払わなければ退去せよ」と言ってきた。どちらが正しいのか?

→  「法定更新」というのは、家主と借主との間で、「合意更新」が不可能な場合に、借主がそのまま引き続き物件に住み続けた場合、借主が一方的に追い出されたりしないように、居住権の存続を認めた状態をさしています。
  契約書に記載があり、借主はそれを承知で契約していたわけですから、原則として、借主は更新料を支払うべきです。
  しかし、更新料の支払いを拒否したままで住み続けて法定更新に至った場合にも、更新料の支払いが必要かどうかは、判例でも判断が分かれています。
  法定更新という考え方自体、借主の居住権を保護するために設けられた考え方ですが、自ら承認した更新料の支払いを拒否するために利用するものではないというべきです。
  更新料の支払いを拒否して、法定更新した場合、家主との間にギクシャクした関係になることは確実ですので、その後の生活や退去時にトラブルが発生する確率も増えてくるでしょう。


(3)次の物件への入居可能日が、現在の物件の契約期限が切れる3日後であるため、家主に話したところ、「日割り家賃だけでなく更新料も支払ってもらう必要がある」といわれた。しかし、たった3日間なのに、更新料を全額支払うのは納得できないので、何とかできないでしょうか?

→ 契約内容を厳密に適用すれば、1日でもオーバーすれば、合意更新するための更新料の支払いを行わなければならないということになります。
 更新料の支払いを拒否した場合、「法定更新」自体は可能になりますが、今度は、「期限を定めない契約」に移行してしまいますので、借主側から解約するためには、3ヶ月前までの通告が必要となりますので、かえって不都合ということになります。
 引越し業者の中には、一定期間、荷物を預かってくれるところもありますので、3日間だけ荷物を預かってもらい、その間は、ビジネスホテルで生活した場合にどれくらいの出費になるかを調べ、家主が請求する「日割り家賃+更新料の半額」費用を比べてみて、安くなる方法を選択するというやり方もあるでしょう。

更新手数料

(1)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書のどこにも記載がないので拒否したいのだが、業者は「更新手数料を支払わなければ更新しない」と言っている。どうすればよいか?

→  手数料は、本来、業務の依頼をした人が、依頼を受けた人に対して、その業務量に応じて支払うべきものです。
  もともと、契約の更新は、家主と借主との間で行うものですが、家主が自ら更新手続きを行うことをわずらわしく思い、家主の代理人として管理会社に業務を委託することがよくあります。
  従って、家主は、管理会社に、契約更新の手数料を支払うことになります。
  借主の立場から言えば、契約更新の手続きに関しては、誰にも委託したわけでなく、本来、家主との間で行うべき作業を、家主の代理人である管理会社と行っているわけですから、管理会社に、更新手数料を支払う理由は一切ないはずです。
  管理会社は、更新手数料を家主から受け取ればよいのですが、中には、家主から得る更新手数料以外に、借主からも何の合理的な理由もなく、更新手数料を請求している業者もあるのです。
  本来、支払うべき理由もないのに、手数料を徴収するというのは、不当利得に当たりますので、支払う必要もありませんし、支払った手数料の返還も請求できると思います。
  なお、契約書に、更新手数料を支払う旨の記載がある場合はどうなるかということですが、賃貸借契約書は、家主と借主との間の取り決めですから、そこに記載された第三者への手数料の支払いは契約内容として有効かどうかという問題があります。
  契約書に、更新手数料が明記されている場合についても、後述にあるように、ほとんどの場合、特約としては認められないでしょう。


(2)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。そこで、契約時の書類をよくみると、重要事項説明書にはその旨が書かれていた。このような場合、更新手数料の支払いを拒否することはできないのか?

→  契約更新に当たって、借主が更新手数料を支払う義務はないことは、前項で述べたとおりです。
  更新手数料の支払い義務に関して、仲介業者で受けた重要事項説明書で記載されている場合にどうなるかということです。
  重要事項説明書というのは、契約前に、借主が契約するかどうかの重要な判断をするに当たって、必要となる重要な判断ポイントを記載した文書であり、宅地建物取引業法で定められたものです。
  この重要事項説明書に記載されている意味ですが、それは、法律上、記載が求められた、「賃料以外に授受されるお金」として記載されているという意味しかありません。
 それは、借主の利益のために記載されているだけであり、借主のお金の支払い義務を定めたものではないのです。
  逆に言えば、重要事項説明書に記載されていることを盾として、更新手数料の支払いが義務づけられることはあり得ないのです。


(3)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書をはじめ、どこにも「更新手数料が必要」という記載がないので拒否することにし、家主に対し、「家主との間で直接更新手続きしたい」と言ったが、家主は「管理会社に任せているので管理会社を通してほしい」と言って譲らない。このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?

→  まず、一般的にも、借主が更新手数料を負担する義務はありませんし、まして、契約書のどこにも、「更新手数料が必要」と書かれていなければ、更新手数料を支払う必要は一切ありません。
  家主は、家主の本来業務として更新手続きを行うべきですが、それを管理会社に代行させること自体は問題ではありません。
  しかし、家主が管理会社に代行させることに問題がなくても、更新手数料を借主から徴収するということはまったく別問題です。
  つまり、家主が、管理会社が借主に請求する更新手数料を負担すれば、何ら問題が発生しないのです。
  従って、借主は、家主や管理会社に対して、「家主の希望にもとづいて、管理会社を通して更新手続きすることはかまわないが、更新手数料は家主が負担すべきである」と主張してください。
  それでも、家主や管理会社が、「更新手数料を支払わなければ更新手続きは行わない」という脅しをかけてくるかもしれませんが、そのような場合には、家主との間で、「合意更新」ができないだけで、そのまま住み続けることで、法定更新状態に移行するだけです。
  法定更新状態になれば、従来の契約内容はそのままで、契約期間を定めない契約となるだけです。
 特に、生活上、問題となることはありませんし、法定更新すれば、合意更新に必要な更新料も支払う必要はなくなります。
  借主から、更新料の支払いを拒否して、法定更新に持ち込むというのは許されない好意といえますが、家主側の事情により、やむなく法定更新状態となった場合には、更新料の支払い義務は免除されると考えるべきでしょう。


(4)家主に支払う更新料以外に、管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書をみると、確かに「更新手数料が必要」という記載があった。このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?

→  前項までに述べているように、原則として、更新手数料は支払う必要はありません。
 しかし、契約書の中に、「更新手数料が必要」と記載されている場合には、「通常、家主が支払うべき更新手数料を借主が代わりに負担することを認めた」ということになるわけですから、一般論としては、支払い拒否をすることはできないように見えます。
  ところが、常識的には支払う必要がない費用を、「特約」として、借主に支払いをさせるようにするためには、判例によれば、「特約の必要性があること」、「借主が特約の意味を理解していること」、「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」などの事情がなければならないとされているのです。
  そうすると、まず、「特約の必要性がある」というような合理的理由がありませんし、借主が、特約の意味、すなわち、「本来、家主が支払うべきものを借主が代わりに支払うのだ」ということを認識していなければならないのですが、そのような理解をしていることはまれでしょうし、契約段階で、そういう説明を受けて承諾していることも滅多にないでしょう。
  従って、契約書に「更新手数料の記載がある」としても、特約として認められるような事情がなければ、特約として認められないということになります。
  なお、2001年4月以降に結ばれた契約では、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項」に当たりますので、このような規定は一切認められません。


(5)家主に支払う更新料以外に、仲介業者から更新手数料の請求が来た。契約書をみると、確かに「更新手数料が必要」という記載があった。このような場合には、しかたなく更新手数料を支払わなければならないのか?

→  前項で、契約書に更新手数料の記載があっても、ほとんど認められないことを述べました。
  逆に言えば、ほんの一部のケースとして、認められるケースもあるということですが、それでも、更新手数料を管理会社に支払うという場合のみです。
  更新手数料を仲介業者に支払うということになれば、仲介業者は、宅地建物取引業法違反に問われる可能性があります。
  つまり、宅地建物取引業法によれば、業法に定められた報酬規定以外に報酬を受け取ることは禁止されており、更新手数料は、仲介業務に無関係ですから、当然のことながら報酬規定にないからです。
  従って、万が一、更新手数料を、仲介業者(管理会社兼任ではない)が受け取るということになれば、宅地建物取引業法に違反すると判断される可能性がありますので、支払い拒否してください。
  それでも、仲介業者が請求するようであれば、「都道府県庁の宅建業者監督窓口に相談する」というように言えば、仲介業者は、それ以上の追及をやめると思います。


連帯保証人・保証会社関連

(1)契約更新時に、更新後の連帯保証人の変更をしたいが、可能か?

→ 連帯保証契約というのは、家主と連帯保証人とのあいだで結ばれる契約です。
 したがって、借主が、連帯保証人の変更を希望しても、家主が承諾しなければ、変更することはできません。
 また、連帯保証人本人が、変更を希望したとしても、家主の承諾がいります。


(2)契約更新時に、更新後の連帯保証人の変更をお願いしたが、家主に拒否された。何とかならないか?

→ 前項で述べたように、連帯保証契約は、家主と連帯保証人とのあいだで結ばれる契約であり、借主が、連帯保証人の変更を希望しても、家主が拒否すれば、変更できません。
 しかし、変更する理由が、従来の連帯保証人の資力がなくなってしまったというような場合には、新たに立てようとする連帯保証人候補の資力が十分であることをきちんと説明すれば、家主が変更を拒否する理由はないと思います。
 誠意をもって交渉しましょう。


(3)契約更新時に、家主側から、「連帯保証人の変更が契約更新の条件である」と言ってきた。新たな連帯保証人を立てるのが困難なので、家主の要求を拒否したいのだが‥。

→ 契約更新後も、従来の連帯保証契約がそのまま更新されるかどうかについては、実は、否定説(更新後は従来の連帯保証契約は無効となる)と肯定説(更新後も従来の連帯保証契約は有効である)の2つの学説が対立しています。
 したがって、現状においては、契約更新の際には、家主としては、従来の連帯保証人に対して、更新後も連帯保証契約を行う意思と資力があるかどうかを確認しなければなりません。
 その結果として、家主が、従来の連帯保証人では資力が不十分であると判断した場合には、新たな連帯保証人を立てる必要があるでしょう。
 家主が、「連帯保証人の変更が契約更新の条件である」ということは、「連帯保証人を変更しないと退去を求める」ということになります。
 一方、借地借家法では、家主側から退去を求めるには、契約終了の1年前から6ヶ月前までに通告することと「正当事由」が必要です。
 そうすると、連帯保証人の変更ができない場合に、家主が退去を求める「正当事由」として認められるかどうかがポイントになってきます。
 つまり、2つの考え方が対立しているように見えるのです。
 判例では、家主から退去を求める「正当事由」は、非常に限定的に解釈されており、「借主が新たな連帯保証人を立てない」ことで正当事由として認められることはないでしょう。
 一般的に、連帯保証人をつけることが契約の条件である場合には、連帯保証人の確保ができなければ、契約が成立しないということになりますが、それは、最初の契約時点でのみ有効というべきであり、契約更新時には有効とはならないと解釈すべきでしょう。
 なぜなら、もし、「連帯保証人の変更要求」が、退去を求める正当事由として有効であるとするなら、家主は、非常に簡単に退去させることが可能となり、借地借家法の強行規定の趣旨が無意味となってしまうからです。


(4)契約更新時に、家主側から、「連帯保証人を追加せよ」と言ってきた。新たな保証人を追加するのが困難なので、家主の要求を拒否したいのだが‥。

→ 連帯保証契約は、家主と連帯保証人との間に結ばれる契約です。
 契約更新後も、従来の連帯保証契約が続くかどうかは、2つの対立する学説があり、家主としては、契約更新に際して、従来の連帯保証人に対して、更新後の連帯保証の意志と資力の確認をしておいたほうがよいのは、前項で述べた通りです。
 そのとき、従来の連帯保証人の意思は確認できたが、資力については不安だというような場合に、連帯保証人の追加を求めてきたのだと思います。
 原則論としては、連帯保証人の追加は、従来の連帯保証人に求められたことであり、法的には、借主には無関係です。
 したがって、開き直ってしまえば、「連帯保証人の追加については、直接、連帯保証人と交渉してほしい」と言って突き放すことも可能です。
 しかし、常識的には、家主との関係を考慮すれば、無視することもできないと思いますので、できる限り、新たな連帯保証人を見つける努力を行うか、保証会社の利用を付け加えることにより、家主の不安を解消すべきでしょう。
 それでも、新たな連帯保証人の追加が不可能であったとしても、無理やり退去させられることはありません(法的には不可能でしょう)。


(5)契約更新時に、従来の連帯保証人ではなく、保証会社の利用に切り替えたいが、可能か?

→ 連帯保証契約は、家主と連帯保証人との間の契約です。
 契約更新後も、従来の連帯保証が継続するかどうかは、対立する2つの学説もあり、明確にはなっていませんが、いずれにしても、借主の一方的な希望で、連帯保証人契約から保証会社の利用に切り替えるのは、原理的に不可能です。
 しかし、従来の連帯保証人に、連帯保証の意思や資力がなくなっているような場合には、新たな連帯保証人を見つけたり、保証会社の利用を行おうというのは、借主の利益であると同時に、家主の利益でもあるわけです。
 したがって、その点を家主にきちんと理解してもらうようにしましょう。
 特に、それまで、保証会社のサービスを利用したことがない家主の場合には、不安が先立って、保証会社の利用を拒否するようなケースも多いと思われますので、保証会社のサービス内容について、家主が納得できるような説明と説得を行う必要があるでしょう。
 それでも、家主が、「保証会社の利用はできない」というような場合には、家主と従来の連帯保証人との間の交渉にゆだねてしまうか、別の連帯保証人を探すことになるでしょう。
 なお、それらが確定していなくても、そのまま継続して住み続けることはできます(無理やり退去させられることはありません)ので、まずは、安心してください。


(6)契約更新時に、家主側から、「従来の連帯保証人ではなく、保証会社の利用に切り替える」と言ってきたが、従来の連帯保証人のままで行きたい。何とかならないか?

→ 連帯保証契約は、家主と連帯保証人との間で結ばれている契約です。
 家主が、「保証会社の利用に切り替えたい」というのは、どういう理由からでしょうか?
 もし、従来の連帯保証人の資力がなくなってしまったというような事情があれば、家主の主張も無視できないでしょう。
 原理的に言えば、家主が、従来の連帯保証人に対して、「新たな連帯保証人を見つけるか、資力が足りない分は保証会社を利用せよ」というべきですが、借主に対する要求として出された場合でも、何とかしなければならないでしょう。
 しかしながら、従来の連帯保証人に、更新後も、連帯保証の意志と資力が十分あるようであれば、家主の主張に従う義務はないというべきでしょう。
 そういう場合には、保証会社の保証料を家主が支払うか、せいぜい、借主との間で費用を折半する程度で十分でしょう。交渉してください。